総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~
「じゃ、取り敢えず教室入るか」
「授業中に転校生の紹介なんてしていいの?」
「誰かさんが遅刻したから仕方ねえんだ」
「……えへ」
笑顔で誤魔化してみた。
「ったく。俺が先に入るから、ちょっと待ってな」
あんまり効き目は無かったみたいだけど話が逸れたから結果オーライ。
「お前ら一旦自習やめろー。
……って、真面目に勉強してる奴なんていねえか」
教室に入って行った先生の声が聞こえる。
静かは静かでも勉強していた訳ではないらしい。
「えーっと、今から転校生を紹介する。
桜、入って来い」
柊先生に呼びかけられ、一度ゆっくりと息を吐いてから教室に踏み込んだ。
その瞬間教室の空気がガラリと変わる。
教室内にある殆どの視線が自分に向けられているのが分かった。
まあそうなるよね。
だって私滅茶苦茶可愛いし。
私の思考を読み取ったらしい柊先生が呆れたように溜息を吐いたのには気づかないフリ。
教卓の前で立ち止まって新しいクラスメイトの方を見る。
赤、青、金。
明るい髪色ばかり広がっている中に、一人だけ。
光に反射して髪筋が見える程に綺麗な黒髪の男子がいた。
やっと。やっと会えた。
私の大好きな、初恋の人。
「はじめまして。園崎 桜です。
好きな人は…九条 和葉くんです!」