契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました

　どうやらお昼に渚が瀬名のランチ会を断ったことに腹を立てているようだ。いや、参加したら参加したで文句を言うだろうから、ただ単に瀬名に話しかけられたことが気に食わないのだろう。
　……いやそもそも、彼女たちは渚の何もかもが、気に食わないのだ。
　なにせ渚は……。

「あーあ、所長の娘と一緒に働くなんて、本当勘弁してほしいわ」

　吐き捨てるように愛美が言う。
　そう、渚はこの佐々木総合法律事務所の所長である佐々木龍太郎の娘なのである。二年前に短大を卒業してこの事務所に就職した。
　だからもともといた事務員たちからしてみれば、青天の霹靂だったのだろう。まさかボスの娘と働くことになるなんて。
　やりにくいと思うのも無理はない。だからこんな風にして陰口を叩かれるのもある意味仕方ないことなのだ。
　渚は小さくため息をついた。