契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 こんなことでお礼ができるとは思わないが、今の渚にできることはこれくらいしか思い付かない。

「私、瀬名先生のこと誤解してたみたい」

 渚はシチューにブロッコリーを入れてため息をついた。

「あそこまでいい人だとは思わなかった。お父さんのことも全部うまくやってくれたし……」

 結婚を決めたとはいえ、式も挙げずに一カ月後には同居開始だなんて普通なら絶対に許してくれそうもないスケジュールを父に認めさせたのは他でもない瀬名だった。いったいなにをどう言ったのかは知らないが、おかげで渚は無事に再来週から専門学校に通うことができる。

「いい先生だとは思ってたけど、派手な噂が絶えない方だったから、一緒に住むのはちょっと不安な部分もあったのよ。でもなんにも心配なさそう」

 それどころか最強の味方ができた気分だった。
 だがすっかり安心してしまった渚に対して、千秋の意見はちょっと違っていた。

《あらぁ、そんなのわからないわよ! そんなに親切にしてくれるなんて、逆にあやしいわ。きっと下心ありなのよ》
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