契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「お姉ちゃんったら……」

 渚はくつくつとわきそうでわかないシチューを焦がさないように慎重にかき混ぜながらスマートフォンを睨んだ。

《だって普通じゃ考えられないわ。そんなに親切にしてくださるなんて。むしろ下心ありって言われた方が安心しちゃうくらいよ。でもべつにいいわよね、下心があっても。あんなにイケメンで爽やかさんなんだもの。渚、あなたついでだから、この機会に少しお勉強させてもらいなさい。アッチ方面のこと》

 とんでもないことを言う千秋に渚は頬を膨らませた。

「無茶言わないでよ……。瀬名先生だよ? 女子アナと付き合ってたことだってある人が、私に興味を持つわけがないじゃない」

 派手な噂話がある彼との同居が不安だったと言ったのは、なにも自分と瀬名がどうにかなることを心配していたわけではない。
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