契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 でもそこで言葉を切ってから、もう一度シチューのお鍋をチラリと見た。

「ただ……そうだな、こうやって食事を作ってくれるのはありがたいかもしれない。私はまったく自炊はしないから普段は外食なんだが、正直言って飽き飽きしてて……」

「やります!」

 渚は嬉しくなって声をあげる。

「お口に合うかどうかはわかりませんが、精一杯やらせていただきます」

 瀬名がにっこりと微笑んだ。

「もちろん、無理のない範囲でいいよ。私も毎日食べられるとは限らないし。ま、先は長いんだから臨機応変にお互いになにかあったら遠慮なく相談し合おう」

 穏やかに微笑む瀬名を見て、渚は胸が感謝の気持ちでいっぱいになってゆく。
 やっぱり瀬名先生はいい人だ。
 こんな人が協力してくれるなんて、なんて自分は運がいいんだろう!
 それなのにお姉ちゃんたら、下心ありなんて疑ったりして、あとで苦情を言わなくちゃ。
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