契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 でも今はなにはともあれと思い、渚は瀬名に向き直り、深々と頭を下げた。

「瀬名先生、私に協力してくださって本当にありがとうございます。短い期間ですが、お邪魔にならないようにしますのでよろしくお願いします! ここにいる間は私にできることはなんでもしますから、先生も遠慮なくおっしゃって下さい」

 その渚に、瀬名が一瞬驚いたように目を開いて、動きを止める。そしてキッチンカウンターに手をついて、はぁーと長いため息をついた。

「?」

 少し予想外のその反応。もしかしたら渚なんかが瀬名の役に立つことなどなにもないのにと、呆れられたのだろうか。渚がそう思った時、瀬名がボソリと呟いた。

「……俺はお姉さんの意見に賛成だな」

「……え?」

 渚は呟く。
 瀬名が渚をジッと見つめて同じ言葉をもう一度繰り返した。

「俺はお姉さんの意見に賛成だ」

 なぜ今姉の話が出てくるのだろうと渚は首を傾げる。けれどすぐにさっきの電話での会話を思い出して、ハッとして息を呑んだ。
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