契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
『きっと下心ありなのよ』

 瀬名はキッチンカウンターにもたれかかり腕を組んで渚を見ている。
 明らかにさっきまでとは違うどこか不遜な彼の言動に渚は戸惑い、なにも答えられなかった。
 その渚に瀬名は呆れたような声を出した。

「君、それでよく今まで無事に生きてこられたな」

「は?」

「こんなに簡単に人を信用するなんて。せっかくお姉さんが忠告してくれているのに」

 その言葉に渚は思わず声をあげる。

「先生!? やっぱりさっきの話聞いてたんですか!」

 瀬名は悪びれる様子もなく肩をすくめた。

「勝手に聞こえてきたんだよ。お姉さんには、神倉さんの結婚式以来お会いしてないけど、なかなかしっかりとした方だ。男のこともよくわかってらっしゃるみたいだし……」

 そう言って瀬名は意味ありげな視線を渚に送る。
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