契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 その視線に、また"下心あり"の言葉が頭に浮かんで、渚の頬が燃えるように熱くなった。
 会話を聞かれていただけでも恥ずかしいのに、まるで姉の指摘を肯定するかのような瀬名の言動に、頭が混乱してなにがなんだかわからない。
 ついさっきまでの穏やかで優しい彼とはまったく違う瀬名の態度にも、びっくりしすぎて頭がうまくついてゆかなかった。

「先生……?」

 ここ数週間で積み上げた渚の中の瀬名に対する信頼が、ガラガラと崩れ落ちてゆく音を聞きながら渚は一歩後ずさる。
 さらにそこへ瀬名が畳み掛けた。

「和臣だ」

「……は?」

「もう結婚したんだから、家では名前で呼べ。夫を先生なんて呼ぶ奴があるか」

「そんな!」
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