契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 姉の方はその逆で、派手に遊びまわりよく父に叱られていたけれど、彼女も彼女なりに心配だという気持ちを消化できないでいたのだと思う。
 短大の頃に祖母と母を相次いで失ってからは、色を失った世界の中で自らの将来に対する不安を抱え、もがき苦しむだけだった。
 いつまでも恋人のひとりもできない渚を心配した姉に『どんな人がいいの? 祐くんの友達を紹介してもらおうか』と言われても全然ピンとこなかった。
 でももし今、同じようなことを尋ねられたら『瀬名先生みたいな人がいい』と言うかもしれない。
 彼はさして親しくもなかった渚の無謀な計画に真剣に耳を傾けてくれた。今も、渚の気持ちに寄り添ってくれている。
 もしまた自分が恋をするならば、彼のような人がいい。
 もちろん、あくまでも"例えば"の話だけれど。
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