契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣が眉を上げて先を促した。

「この食料、明日からの夕食作りに使ってもいいですか?」

 ワクワクするような荷物の中身にすっかり夢中になってしまっている渚だけど、この食料はあくまで和臣宛に来たものなのだ。
 どう料理しようかなんて浮かれてないで、それを先に確認するべきだ、と渚は思ったのだけれど……。
 だがそんな渚の言葉に、和臣の方は不意を突かれたように目を開き、次の瞬間吹き出した。
 そしてそのまま肩を揺らして笑っている。

「あのー、ダメですか?」

 渚は恐る恐る問いかけた。

「そうじゃなくて! ははは、もう、なんなんだ君は。呼び方だよ、呼び方。先生じゃないだろう!」

 まったく敵わないなと言いながら笑い続ける和臣に、渚はそうだったと思い出した。
 ついさっき、荷物が届くまではその話をしていたんだった。ついつい荷物に夢中になって、すっかり忘れてしまっていた。
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