契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 でもそれにしたって、と渚は思う。
 ちょっとしつこいな。
 こんなに素晴らしい食材を前にしたら、そんなことどっちだっていいじゃないかという気になる。
 和臣は佐々木総合法律事務所の中では的確な指示を出す、一番やりやすい弁護士だと思っていた。
 でもプライベートは、意外とめんどくさいタイプなのかもしれない。
 そんな渚の考えは、どうやら顔に出てしまっていたようだ。
 和臣が突然笑うのをやめて、渚の手の中の味噌を取り上げた。

「あ」

 そして無情なことを言い放つ。

「どうしても呼びたくないならこの食料はなしだ」

「え!」

 そんなのあんまりだと渚は思う。
 和臣がニヤリと笑った。
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