契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
『先生のお家って農家だったんですか⁉︎』

 キラキラとした目で問いかけられて和臣は一瞬唖然とした。
 この変わりようはなんなんだ、と。
 ついさっき荷物が着く直前までは、和臣に追い詰められて、小鹿のように震えていたというのに。
 また『先生』と呼んでしまっていることを気付かせたくてじろりと睨んでやると、彼女は目をパチパチとさせて少し考えてから、まったく的外れな言葉を口にした。

 まったく敵わないな。

 思い出してまた笑い出しそうになってしまい、和臣は口もとを手で覆った。
 渚の頭の中はきっといつも美味しい食材をどう料理しようか、そんなことでいっぱいなのだろう。
 同居開始の日に姉に"アッチ方面も勉強させてもらえ"と言われていたのも頷けると和臣は思った。
 結局、味噌を餌にどうにかこうにか名前で呼ばせることには成功したが、とにかく和臣が今まで付き合ってきた女性たちのように一筋縄でいかないことは確かだった。
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