契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 それに尋ねられるままに答えながら、和臣はどこか懐かしい気持ちに陥っていた。
 田舎にはここ数年は働き詰めで、なかなかゆっくりとは帰れていない……。
 そして気がついたらいつのまにか彼女を誘っていたのだ。

『そんなに興味があるならお盆休みに行ってみるか』

と。
 それに目を輝かせて頷いた彼女は、その帰省をおそらくはせいぜいが社会見学程度に考えているのだろう。
 和臣としてもなにか意図があって誘ったのではない。
 それでも……。
 和臣はカレンダーをジッと見つめる。女性を自分の実家に連れてゆくのは初めてのことだった。
 そういえば結婚を考えていたあの彼女は、和臣の実家のことになど一ミリも興味を示さなかったな、和臣がそんなことを考えたその時、携帯がブーンと鳴ってメールの到着を知らせる。
 渚からだった。

【今日は煮魚です。和臣さんの分は温めるだけにして冷蔵庫に入れておきます】

 時計を見ると時刻はいつのまにかお昼休みに突入している。和臣は思わず笑みを漏らした。
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