契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 案の定、すぐにオッケーが出たようで老夫婦は相談室へと通されていった。
 実はこのようなことはよくあることだった。
 テレビで顔を知られている和臣には指名での相談は珍しくない上に、事前にアポイントをとらないで来る飛び込みの相談者も時々ある。 
 本来ならアポイントなしの相談は受けないのが他の弁護士のやり方だが、和臣は違っていた。
 その時のスケジュールが空いていなければ、待ってもらえる限りは待ってもらい、なるべくその日中に相談を聞くというのが彼のスタイルだった。
 まだ渚が新人の頃、同じようなことがあった。その時はあいにく和臣のスケジュールが空くのが二時間後で待ってもらえるならばという話だった。
 相談者は、

『何時間でも待ちます』

と言って本当に相談室で待っていた。
 それを和臣に報告した折に、渚は思わず呟いてしまった。

『でも二時間も待ってもらうなんて……』

 その時もその"二時間後"はやっぱり和臣の唯一の休憩時間だったから、別の日に出直してもらう方がお互いのためにいいと思ったのだ。
 その渚に、和臣は優しく語りかけた。
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