契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 いったい、私どうしちゃったの……?

 またこんなことを考えてしまうなんて。
 渚はため息をつく、そして眠る和臣を睨んだ。
 それもこれも全部彼のせいなのだと思う。
 あの土曜日の昼下がりに、和臣が見せたいつもと違う彼の顔。
 ……いやもしかしたらあれが、本当の彼なのかもしれない。美人アナウンサーも女優もどんな魅力的な女性だってすぐに虜にしてしまう、瀬名和臣の男性としての本当の姿。
 あの日彼が渚にそれを見せたのは、きっと脅かそうとしただけなのだろう。
 この結婚が嘘だとバレたら和臣だってただではすまないのに、いつまでも名前で呼ばない渚に焦れて、少し強引な手段に出ただけなのだ。
 現に渚が名前で呼ぶようになったあとは、またすぐに穏やかな彼に戻っているのだから。
 でも、男性との経験がまったくない渚の方は、それだけでは済まない。
 ほんの少し近くに彼を感じた、唇に触れられた、ただそれだけで、こんなにも胸がざわざわとして落ち着かなくなってしまう。
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