契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 みゆきが、ふふふと笑って言葉を続けた。

「瀬名兄弟といえば、この辺りでは昔からカッコいいので大人気だったんだよ。バレンタインデーには家の前に女の子の行列ができるっていわれてたんだから」

 みゆきと兄の雅也は、中学からの同級生だ。

「おい、みゆき、渚ちゃんに嘘をおしえるな」

 雅也が苦笑して妻を止める。だがみゆきはそんなことはお構いなしだった。

「嘘じゃないもん。本当だよね、お母さん」

 母親が、

「どうだったかね」

と笑った。

 渚が、

「そうなんですね」

と驚いた様子で目を開いた。そして兄とみゆきを見比べて興味深げに口を開いた。

「お姉さんは、お兄さんのどこが好きなんですか?」

「私はねー」

とみゆきが頬杖をついた。

「学生時代はなんとも思ってなかったんだ。でも卒業してから街でOLしてた頃に、実家に帰ってきてさ、家を継いだばっかりのまさ君を見かけたんだよ。それでなんていうか、耕運機を操る姿にぎゅんときちゃったんだよね。男らしい筋肉、滴る汗! みたいな」

「みゆき、それ以上言うな」

 雅也は慌てて彼女を止める。だが、父も母も平然としていた。
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