契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 でも今夜は、そういうわけにはいかない。
 先ほど夕食を済ませたふたりは、明日の出発に備えて、早めに休むことになった。
 そして促されるままに先に風呂に入り、部屋に戻ってきてみればこうなっていたのである。
 これはさすがに……と渚は思った。
 こんな距離で和臣と並んで寝そべっても、とてもじゃないが眠るどころの話ではない。
 現にもう今この光景を見ただけで渚の胸は落ち着かなくなってしまっているのだから。
 渚は廊下と部屋を隔てる襖にチラリと視線を送る。そして渚と入れ替わりでお風呂へ行った和臣が戻ってきていないことを確認してから、急いで布団のところへ行き、その片方に手をかけた。
 ずりずりずりと引っ張ると、ふたつの布団の間には五センチほどの隙間ができた。
 まだ足りない。
 ずりずりずり……十センチ。
 渚はうーむと首を傾げる。
< 173 / 286 >

この作品をシェア

pagetop