契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 せっかく広い部屋なんだから、どうせなら、思いっきり離してしまって端と端にしたいくらいだった。
 でもそれはいくらなんでも不自然だし……。
 だとしてももう少しくらいは、と思い渚は布団をずりずりと引っ張り続ける。
 そしてふたつの布団の間が、一メートルほどに達したその時。

「なにをしてる」

「きゃっ!」

 突然声をかけられて、渚はびくりと肩を揺らす。
 恐る恐る振り向くと和臣が腕を組んで襖にもたれかかるように立っていた。どうやらなにか忘れ物をして戻ってきたらしい。

「あ……、あのお布団を敷いていました」

 渚は咄嗟に嘘をついて、彼から目を逸らす。そしてチラリと布団に視線を送った。
 ふたつの布団はもはや不自然なくらいに離れている。
 渚の言い訳も不自然だった。

「へぇ……電気もつけないで?」
< 174 / 286 >

この作品をシェア

pagetop