契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣が眉を上げる。苦しい渚の言い分に納得していないのは明らかだった。
 裁判ではどんな相手でも追及の手を緩めないであろう百戦錬磨の彼に、渚などは到底敵わない。観念して渚は口を開いた。

「お布団が、あ、あまりにもぴったりくっついてて、ちょっとこれは、と思いまして……わ、私すごく寝相が悪いんです。和臣さんのこと蹴っちゃったりしたら申し訳ないし……。このくらい開いてたら、大丈夫かなと思います」

 和臣がじろりと渚を睨んだ。

「声をかけなかったら、そのまま部屋の隅にまで引っ張っていきそうだったけど」

 う、するどい……。

 渚は肩をぎくりとさせて視線を泳がせる。

「そ、そんなことは……」

 そこまで言って口を噤んだ。
 でも胡散くさそうに渚を睨む和臣の余裕の表情を見るうちに、なんだかムカムカするような気持ちが心の底から湧いてきてしまう。
 そりゃあ、女性との付き合いなんて飽きるほど経験のある和臣からしたらべつになんてことはないだろう。
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