契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚が隣で寝ていても、きっとぬいぐるみがいるくらいにしか思えないに違いない。
 たくさんの人と付き合ってきた彼なら……。
 そんなことまで頭に浮かんで、なんだか悔しくなってしまい渚は口を尖らせた。

「でもこうするのが自然だと思います。むしろこうするべきです」

 なにも咎められるようなことはしていないと渚は胸を張って主張する。
 和臣が眉を上げて問い返した。

「自然?」

「そうです。だって私たちは本当の夫婦ではないんですから!」

 そう、ふたりは形だけの夫婦なのだ。
 そんなふたりがそもそも同じ部屋で寝るだけでも不自然だと渚は思う。
 ちょっと布団を離したくらい、なんだ。
 渚は頬を膨らませてもう一度布団に手をかける。そしてまたずるずると引っ張り始めた。
 どうせもうバレてしまったんだ。この際、本当に安心な距離まで離してしまおう。
 でもすぐに、いつのまにか背後に移動していた和臣にドンとぶちあたりストップした。
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