契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 それでは困ると渚は思った。
 期間限定の恋心が、本物になってしまったら、いったいどうしてくれるんだ。

「は、離して下さい」

 渚はぶんぶんと首を振る。
 だが和臣は拒否した。

「ダメだ。もうここまでにすると言うなら離してやる。これ以上布団を離して寝ていて、明日誰かが起こしにきたらどう言い訳するつもりだ?」

 すぐ耳もとから聞こえる低い声、和臣の香りに包まれて、早くも渚の心臓は爆発寸前だった。

「は、は、早起きすればいいと思います!」

 誰かが起こしに来る前に起きてもとどおりにしておけばなんの問題もないだろう。
 それを和臣が笑った。

「へぇ……渚が? 今朝はなにをしても起きなかったけど」

「え、今朝⁉︎」

 不可解な彼の言葉に、渚はハッとして目を見張る。
 和臣が愉快そうにくっくと笑った。
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