契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました

　今朝彼は、渚が起きた時はすでに部屋にいなかった。だから渚はそのことについて、あまり深く考えていなかったのだけれど、つまり彼からしてみれば、起きた時は隣に寝ている渚がいたという状況なのだ。
　よからぬことが頭に浮かび、固まってしまった渚に、和臣が笑いを噛み殺しながら信じられない言葉を口にした。

「寝相が悪いのは本当みたいだな。でも夏だからってお腹を出して寝たら、風邪引くぞ」

「っ……！　し、信じられない！」

　渚は掴まれていた手を少し乱暴に振り解く。そしてくるりと振り返って、彼のＴシャツの胸をぽかぽか叩いた。

「みみみ見ないフリをするのがマナーですよ！」

　渚だって一応は女子なのに、まったく、信じられない弁護士だ。

「いて！　ははは！　こら、暴れるな」

　痛いなどと言いながら大して痛そうでもなく和臣は笑って、渚の背中に両手を回す。
　そしてそのまま、ギュッと腕に力を込めた。

「っ……！」