契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 小さく息を吐いて、キッチンに戻ろうとした渚はそういえば彼の書斎に入るのは初めてだなと思い何気なく部屋を見回す。
 そしてあるものに気がついた。
 本棚にたくさん並ぶ水色のファイルだった。
 本来なら重要な個人情報が満載のこの部屋は渚は入ってはいけない部屋なのだ。
 今日はたまたまその必要があったから入っただけ。
 用事が終わったらすぐに出ていくべきだ。でもその水色のファイルが並ぶ本棚に渚は吸い寄せられるように近づいた。
 佐々木総合法律事務所では、水色は、刑事事件の裁判記録をファイリングしてあることを表す色だった。
 弁護士が扱う事件は大きく分けて二種類ある。民事事件と刑事事件だ。
 民事事件はある程度の報酬が見込めるが、刑事事件はそれに比べて報酬が低いのが一般的だ。
 刑事事件の被告人は、弁護士費用を払えるほどの資力がなく、国が弁護士をつける国選弁護制度を使うことが多いからだ。国選弁護制度で定められた弁護士報酬は民事事件のそれに比べると低い。
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