契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
香ばしい揚げ物のにおい、
『おばちゃん日替わり弁当ひとつ!』
と声をあげる常連客。
結婚前までは看板娘として働いていたという母の娘である渚と千秋も行けばたくさんの客から可愛がられたものだ。
食べる専門だった千秋とは違って渚は料理が大好きだったから、中学に上がった頃からは熱心に店に通い、祖母からたくさんのレシピを引き継いだ。
『おばあちゃんの後継ぎは渚で決まりだね』
なんて母に言われて、これ以上ないくらい誇らしい気持ちになったのが昨日のことのように思い出される。
だが渚が短大に通っていた三年前のある日、祖母が突然倒れてそのまま帰らぬ人となってしまった。そしてその半年後、祖母の後を追うようにもともと長く患っていた母も亡くなったのだ。
あの頃の佐々木家は火が消えたように暗かった。
短大を卒業する時に、おばちゃんのお弁当屋を再開したいと言った渚に父は甘ったれたことを言ってないで自分の事務所で働けと言った。
世間知らずのお前には無理だ、と。
『おばちゃん日替わり弁当ひとつ!』
と声をあげる常連客。
結婚前までは看板娘として働いていたという母の娘である渚と千秋も行けばたくさんの客から可愛がられたものだ。
食べる専門だった千秋とは違って渚は料理が大好きだったから、中学に上がった頃からは熱心に店に通い、祖母からたくさんのレシピを引き継いだ。
『おばあちゃんの後継ぎは渚で決まりだね』
なんて母に言われて、これ以上ないくらい誇らしい気持ちになったのが昨日のことのように思い出される。
だが渚が短大に通っていた三年前のある日、祖母が突然倒れてそのまま帰らぬ人となってしまった。そしてその半年後、祖母の後を追うようにもともと長く患っていた母も亡くなったのだ。
あの頃の佐々木家は火が消えたように暗かった。
短大を卒業する時に、おばちゃんのお弁当屋を再開したいと言った渚に父は甘ったれたことを言ってないで自分の事務所で働けと言った。
世間知らずのお前には無理だ、と。