契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
『……週刊誌に?』

 和臣は日本酒のカップを掴んだまま、眉を寄せた。

『はい。番組を取り仕切りる責任上、私は出演者の方のいろいろな情報を耳に入れるようにしてるんです。それで、あくまでも噂ですが』

 和臣はカップを置いて目の前のディレクターと隣の女性プロデューサーを交互に見た。
 今彼が言ったように彼らは番組の責任者なのだから、そうするのは当然だ。また和臣自身もテレビに出ている以上、そのようなことがあるかもしれないとは覚悟していた。
 でも心当たりはなかった。
 刑事事件、とりわけ凶悪事件を起こした被告人の弁護を担当していると、世間の風当たりはきつくなるものだが、今受けている案件の中にはマスコミのネタになりそうなものはない。
 考え込んだまま言葉を発しない和臣に、プロデューサーが声を落として口を開いた。

『先生の、ご結婚についてだという噂です』

『結婚の?』
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