契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました

　和臣は眉を寄せる。
　どきりと胸があやしく騒いだ。
　だがすぐに、渚との結婚の真相は誰にも知られていないはずだと思い直して気持ちを落ち着ける。
　そしてプロデューサーの話に耳を傾けた。

『私たちに他意はありませんから、誤解なきようにお願いしますが、その……奥様は事務所の所長さんの娘さんだそうですね。所長さんは業界では有名なえらい先生だそうで。事務所も都内有数の事務所ですが、後継はいらっしゃらない。だから、その……先生と奥様は、いわゆる政略結婚のようなものなのでは？という噂です。つまり瀬名先生が事務所を継がれるための布石のような……』

　ディレクターが補足する。

『もちろん普通だったら、これくらいのことで週刊誌が動くことなどありません。ですが、瀬名先生は今や全国的に知られていて女性ファンも多い。記事にすれば売れると判断されたようです。人気が出ればそれだけ敵もできますから、好意的な書かれ方ではないかもしれません』

　和臣は腕を組んで黙り込んだ。
　そのくらいのことで？というのが正直な感想だった。