契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 だが一方で、情報の出どころには心あたりがないわけでもなかった。
 法曹界は意外と狭い。古い硬い考えの者も多かった。
 テレビに出ることが多い和臣をタレント弁護士だ、どうせろくに弁護士活動などしてないんだろうと揶揄する声があるのも確かだった。
 その和臣をよく思わない者たちのうちの誰かが、業界でしか知られていない事情を週刊誌にリークしたのかもしれない。

『ス、スキャンダルでもなんでもないのですから、我々はなんの問題もないと思っております。ただ、狙われているということをお知らせしたかっただけで……』

 難しい顔で黙り込んだ和臣をどう思ったのか、ディレクターが少し慌てて言葉を付け足す。
 和臣は小さく息を吐いて微笑んだ。

『妻との結婚が、見合いだったことはまちがいありませんから、そのように思われてもおかしくありせん。おしえて下ってありがとうございます』

 そこで携帯が鳴り、和臣は一度席を外した。そして仕事の電話を一本済ませて戻ってきた廊下で個室の中のふたりの会話が耳に入り足を止めた。
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