契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 のらりくらりは仕方がないと渚は思う。だってふたりは本当の夫婦ではないのだ。
 別れることが決まっている妻を弁護士仲間に大々的に紹介するなど、後々のことを考えたら避けたいに違いない。
 姉の千秋も、渚と和臣の事情を知っているからどうしたものかと頭を悩ませている。
 ちなみに祐介は、渚と和臣の事情を知らない。
 千秋曰く、"口が軽いわけではないけれど、お父さんに嘘をつくなんて祐君にはできないわ。
 三日で胃に穴が開いちゃう"だそうで、彼は渚と和臣が本当の夫婦だと思っている。
 だからこそ、悪気なくお祝いの会の話を持ってくるわけだが、どうしたものかと渚は頭を悩ませた。
 和臣がのらりくらりしているなら、おそらくはその会に行くつもりはないのだろう。渚を妻として弁護士仲間に紹介するなどありえないと考えて。
 なら渚に出来ることはなにもないように思う。
 もう今この時点で、彼には返しきれないほどの恩を受けているのだ。これ以上迷惑はかけられない。
< 214 / 286 >

この作品をシェア

pagetop