契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚は考えながらゆっくりと口を開いた。

「私から和臣さんに行きましょうとはやっぱり言えないわ。お兄さんから誘われても和臣さんがうんと言わないなら……」

《そうよねぇ……》

「ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんまで、お兄さんに隠し事をさせてしまうことになっちゃって」

 渚はしょんぼりと眉を下げる。
 父にバレずに専門学校へ通いたい、渚のその願いのために周りの人をずいぶん振り回してしまっていることに今更ながら気が付いた。

《あら祐君に隠し事は構わないのよ。ふふふ、なにもべつにこれだけってわけじゃないんだし……》

 なにやら不穏な言葉を口にして、千秋は笑った。

《でも私も瀬名さんと一度ちゃんとお会いしたい気持ちもあったのよ。あなたたちの結婚は、渚が専門学校に通うための嘘の結婚なんだから、結婚式も親戚付き合いもないのは仕方がないけれど、まがりなりにも渚が一緒に住んでいる方なんだもの。どんな方か見ておきたいような気もして》
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