契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「専門学校とはいったいなんのことだ? 結婚が嘘だというのは⁈」

 もはや掴みかからんばかりの父に、渚は一歩後ずさる。そして掠れた声を漏らした。

「ご……ごめんなさい、お父さん」

 言い逃れはできない状況に、言えることはそれしかない。
 その渚に、龍太郎が激昂した。

「渚っ! お前……!」

 ぶたれる!
 渚は反射的に目を閉じる。
 厳くとも今まで一度も父は娘たちに手をあげたことはない。けれどこの時ばかりは渚はそれを覚悟した。
 でもその瞬間はいつまでたっても訪れない。恐る恐る目を開くと和臣の背中が渚を守るようにそこにあった。

「かず……」

「私が、渚さんに提案しました」
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