契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣が、ゆっくりと低い声で父に告げる。
 龍太郎が信じられないというような声を出した。

「せ、瀬名くん、君はいったいなにを言ってるんだ!」

「私が、提案したんです」

 はっきりとした和臣の言葉に、龍太郎は目を見開いたまま、絶句している。
 渚は慌てて首を振った。

「ち、違っ……!」

 でもその時、和臣の手が冷たくなった渚の手を取る。そして背中の後ろでギュッと握りしめた。
 まるで"任せていろ"とでもいうようなその温もりに、渚は開きかけていた口を閉じた。
 和臣がよく通る声で、話し始めた。

「あの日、見合いの席で私は渚さんの将来の目標についての話を聞きました。渚さんは、先生の奥様のご実家のカタヤマ弁当を再開したい、そのために調理師の専門学校へ行きたいとおっしゃった。だから、私はそれを応援することにしたんです」
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