契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「乱暴はお止め下さい、先生」

 再び和臣が割って入った。そして厳しい表情で龍太郎と対峙した。

「どのような理由であっても、今は渚さんは私の妻です。……妻への乱暴な振る舞いは、たとえ先生であっても許しません」

 龍太郎が目を見開いて和臣を見る。
 渚の目から涙が溢れた。
 佐々木総合法律事務所では、龍太郎の存在は絶対だ。誰であっても、どんな理由であっても、彼に楯突くことなど許されない。
 下手をすれば、事務所内での立場を一瞬にして失うことにもなりかねない。それなのに、今和臣はそれをしている。
 あくまでも形だけの妻である、渚のために。

「瀬名君、君は……!」

 さすがの龍太郎も、それ自体にショックを受けているようだった。娘の結婚相手にと望むほど、実力と人柄を買っていた彼に、おそらくは初めて裏切られて。
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