契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 自分が見たものがとても信じられなかった。
 今この瞬間に彼は今まで築き上げてきたすべてのキャリアをかけて、渚を守ってくれたのだ。もし彼になにかあったら、自分どうすればいいんだろう。
 力が抜けてへたり込んだままの渚に、和臣がしゃがみ込み、視線を合わせる。そして大きな両手で渚の頬を包み込んだ。

「大丈夫、大丈夫だ」

 力強い言葉。
 どうして彼は自分にここまでしてくれるのだろう。こんな風にしてくれるのだろう。

「で、でも……!」

 頭が混乱して、うまく言葉を紡げない。なにを言えばいいのか、どうすればいいのか、さっぱりわからなかった。
 涙がだけが後から後から流れ出た。

「びっくりしたな、でも大丈夫」
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