契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 薄暗い中で、渚は彼女に向かってぺこりと頭を下げた。
 扱いがよかったとはいいがたいが、仕事を教えてもらったことには違いないのだ。彼女が辞めることについては、なにやら触れてはいけないような空気が事務所内にあったから、事務室では言えなかったけれど、挨拶だけはしておきたかった。
 だが愛美がそれを鼻で笑った。

「はっ! 最後まで気に食わないわね。あなた」

 今日が最後だからか、はたまたふたりきりだからか、いつもより辛辣な言葉を口にして、愛美は鞄から何かを取り出す。そしてそれを渚に叩きつけた。

「っ……?」

 バサリと落ちたそれを渚は訝しみながら拾い上げる。
 今日発売の週刊誌だった。
 愛美に顎で促され、付箋が貼ってあるページを開いて、渚は目を見開いた。
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