契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
その時になって渚はいつのまにか自分が、カタヤマ弁当がある商店街に来ていたことに気がつく。
愛美とのやりとりですっかり動揺してしまい、鞄を手に無我夢中で事務所を飛び出したから、どこへ行くと決めていたわけではないけれど、ついいつものクセが出たのだろう。
祖母と母が亡くなってから、渚は気分が沈んだ時はこの道を歩くようになった。
こうやって以前と変わらないこの辺りを歩いていると、まるでふたりともがまだ生きてるようなそんな気分になるのだ。
花屋のおばさんは、
「久しぶりねぇ」
と微笑んで、少し意外なことを言った。
「今日はお父さんと来たの?」
「え? ……いいえ」
なぜそんな風に言うのだろうと渚が首を傾げながら答えると、おばさんはもっと意外なことをいった。
「あら、そうなのね。さっきカタヤマさんの前を通った時お父様にお会いしたから、てっきり……。そういえば、お父様が来られるのも久しぶりかしら、とは言っても二ヶ月に一度はみえられるけれど」
愛美とのやりとりですっかり動揺してしまい、鞄を手に無我夢中で事務所を飛び出したから、どこへ行くと決めていたわけではないけれど、ついいつものクセが出たのだろう。
祖母と母が亡くなってから、渚は気分が沈んだ時はこの道を歩くようになった。
こうやって以前と変わらないこの辺りを歩いていると、まるでふたりともがまだ生きてるようなそんな気分になるのだ。
花屋のおばさんは、
「久しぶりねぇ」
と微笑んで、少し意外なことを言った。
「今日はお父さんと来たの?」
「え? ……いいえ」
なぜそんな風に言うのだろうと渚が首を傾げながら答えると、おばさんはもっと意外なことをいった。
「あら、そうなのね。さっきカタヤマさんの前を通った時お父様にお会いしたから、てっきり……。そういえば、お父様が来られるのも久しぶりかしら、とは言っても二ヶ月に一度はみえられるけれど」