契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「ううん、とりあえずはまだ辞めない。事務所の近くの調理師学校が、評判も良くて夜間もやってるんだ。頑張れば一年半で資格が取れるはず」

「そうなの……」

 渚がそこまで具体的に考えているとは思っていなかったのか、千秋が感心したようにため息をついた。
 そして眉を寄せて渚を見た。

「でもそれって大変よ」

「うん、それも……わかってる」

 渚も千秋と同じように眉を寄せて頷いた。姉の言う"大変"は、働きながら学校へ行くということに対する言葉ではない。
 調理師免許を取るために専門学校へ行く。それを実現したいなら、渚には乗り越えなくてはならない大きな壁がある。
 それはつまり……。

「お父さんに、黙っているわけにはいかないでしょうし」

 そうやはり問題は父だった。
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