契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 もちろん受け入れることはできないだろうけど、渚がどれだけこの気持ちを誇らしく思っているのかを、わかってもらうことができたなら、あの真っ直ぐな瞳で、渚が次に進むための言葉をくれるはず。

 彼は、そういう人だから。

 佐々木総合法律事務所の前にたどり着いた渚は、肩で息をしながら眉を寄せてビルを見上げた。
 和臣の部屋の電気は消えている。
 もう帰ったのだろうか。
 渚が少し落胆した、その時。

「渚?」

 低いよく通る声で呼びかけられて振り返ると、渚が今一番会いたい人が、そこにいた。

「和臣さん……」

 会えた。
 もうそれだけで、渚は泣いてしまいそうになる。
 伝えたい言葉が頭の中を駆け巡る。
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