契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「和臣さん」

 渚は彼に駆け寄って、背の高い彼を見上げた。

「お、お父さんが……、お父さんが、み、認めてくれたの。仕出し屋さんに話をしてくれて、本気なら行っておいでって!」

 気が昂りすぎて、あまりうまく言葉にできない。
 それでも和臣には、十分伝わったようだった。
 一瞬、綺麗な瞳を瞬かせてから、次の瞬間白い息を吐いて破顔した。

「やったな!」

 その笑顔に渚の胸はギュッとなる。
 大好きな、大好きな、大好きな彼の笑顔。
 彼の愛には手が届かなくても、今この瞬間のこの彼の笑顔は間違いなく渚だけのものなのだ。
 もうそれだけで十分だった。
 和臣が、大きな腕を広げて、渚を抱きしめた。

「よく頑張った、渚」

 耳に囁かれる優しい言葉。
 途端に渚の目から熱い涙が溢れ出した。
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