契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「ですが、見合いをするにあたって、所長から後継の話は一切ありませんでした。反対に私が見合いを断ったとしてもそれで私の扱いが不利になることは一切ないと念押しを受けて私は見合いに臨んだのです」

 渚は赤裸々に語る和臣の話を信じられない思いで聞いていた。
 いったい彼はなにを話すつもりなのだろう。事実のみと言っても、その事実は、世間に知られてはならない内容だというのに。
 記者の方は、目を輝かせて彼に質問をする。

「ではなぜ先生は結婚をされたのですか。次期所長を約束されたわけでもなく、断っても構わないと言われた結婚を」

 渚の胸がどきんと鳴った。
 なんのメリットもない結婚を彼が受け入れたわけ、それを彼はどう説明するのだろう。
 和臣が小さく息を吐く。
 そして相手をジッと見据えて、ゆっくりと口を開いた。

「妻に、恋をしてしまったからです。あの日、見合いの席で」

 はっきりとしたその言葉を、渚は一瞬理解できなかった。

 いったい彼はなにを言っているのだろう?
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