契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 それは記者も同じだったようだ。
「は?」と声を漏らしたまま固まってしまっている。
 和臣が、確認するようにもう一度同じ言葉を繰り返した。

「妻に恋をしたのです。今までほとんど話をしたこともなかった彼女の素顔を知って、誰にも渡したくないと思った。私が見合いを断れば、別の誰かがまた見合いをすることになるかもしれない、それはどうしても避けたかった。だから、私はあの場で彼女に結婚を申し込んだのです。これが、あなたの知りたい事実のすべてです」

 和臣が言うだけは言ったというように、ため息をつく。そして唖然としている記者の鞄に視線を移した。

「ちゃんと録音できていますか?」

 その言葉に、記者はハッとして鞄に手を当てて頷いた。

「よろしい」

 和臣が満足そうに微笑んだ。

「ここまでお話しさせていただいたんだ。いい記事を期待していますよ。間違っても妻が私に結婚を迫ったなどというありもしないことは書かないように。もしそのようなことがあったらその時は……」

「その時は……?」

 記者が掠れた声で尋ねる。
 和臣がニヤリと笑ってその疑問に対する答えを口にした。

「その時は私も容赦はしません。法廷でお会いすることになるでしょう」

 そして和臣が渚の手を取る。
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