契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣が、低い声で渚の名を呼ぶ。
 渚の胸が、痛いくらいに高鳴った。

「渚……」

 ゆっくりと歩み寄り、和臣は渚の頬に手を当てる。
 そして、その言葉を口にした。

「渚、愛してる」

 息が止まる心地がした。
 渚は目を見開いて、信じられない思いで彼を見つめた。
 たった今、絶対にありえない言葉を紡ぎ出した彼の唇を。

「愛してるんだ。君を手放したくない。ずっとここにいてほしい。……俺の本当の妻になってくれ」

 よく通る低い声、真実だけを映し出す真剣な眼差しが渚の胸を貫いた。
 頭の中はシンと冷えて、きっと夢を見ているのだともうひとりの自分が警告をする。けれど、心は燃え上がるように熱くなった。

「ほ、本当に……?」

 掠れた声で尋ねると、視線の先で和臣が微笑んだ。

「あぁ、本当に。もう俺は君を手放すことができない」
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