契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚はその場にへたり込んでしまう。
 今の今まで別れを覚悟していた。踏ん張っていたその分、力が抜けたようになってしまって。

「渚? 大丈夫か?」

 和臣が渚を抱き抱えるように支えて、ゆっくりとソファに座らせる。そして自分はひざまづいて、また熱い眼差しで渚を見上げた。

「わ、別れなくていいの?」

 少し間の抜けた言葉が渚の口から出てしまう。
 和臣が力強く頷いた。

「あぁ。ずっとここにいてほしい」

 視界が滲んで、和臣の後ろの煌びやかなネオンが彼のシルエットと重なった。
 安堵とも歓喜ともつかない気持ちが、渚の胸いっぱいに広がってゆく。
 絶対にありえないと諦めながらも焦がれ続けた夢の世界に、突然放り込まれたような気分だった。
 嬉しいけれど、まだ信じられない。

「和臣さん、わ、私……」
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