契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 でも自分も伝えなくては。
 この気持ちを。
 この想いを。
 自分がどれだけ彼を愛しているのかを。

「わ、私も、私も……か、和臣さんを……」

 うまくは言えない。
 震える唇を上手に動かすことができないからだ。
 流れる涙で、ただ頬が熱かった。

「私……私も、か、和臣さんが好き。好きなの。好き、大好き……!」

 頭に浮かぶ唯一の言葉を、渚は一生懸命に繰り返す。生まれて初めての告白は、お世辞にもうまいとはいえなかった。
 それでも和臣にはそれで十分だったようだ。

「渚……」

 綺麗な瞳が一瞬揺れる。そしてすぐに、温かい腕に包み込まれた。

「和臣さん、和臣さん‼︎」

 大好きな彼の香りを胸いっぱい吸い込んで、渚は繰り返し彼の名前を呼び続ける。
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