契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「和臣さん」

「渚、……よかった」

 安堵したような和臣の声。
 たくさんの恋をしてきたはずの彼が、このくらいで、信じられないと渚は思う。
 でも今この時に、彼も渚と同じ胸の高鳴りを感じているとするならば、素直に嬉しいとも思った。
 期限付きの結婚生活は輝きを放てば放つほど、寂しさをともなう儚い花火のようだった。
 それを本物にできた喜びをふたりは今、共有する。
 いつのまにか添えられた顎の手に、促されるままに見上げれば、燃えるような彼の視線がそこにあった。
 澄んだ瞳、長いまつ毛、男らしい眉。
 大好きな彼のすべてを見つめながら渚が瞬きを繰り返すうちに、和臣の唇がゆっくりと降りてくる。

「ん……」
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