契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 男らしい喉元がごくりと動き、親指がやや強引に唇を割る。

「あ」

 そしてそこは、熱いキスで塞がれた。

「んんっ……!」

 初雪で少し湿った彼のスーツを握りしめて、渚はその甘美な衝撃に耐える。未知の感覚に大きく身体を震わせて。
 唇から侵入する和臣の熱が、彼の香りが、渚の身体中を駆け巡り、渚の中の一番奥に火をつける。

「んんっ……!」

 燃え上がるように身体が熱い。渚は無我夢中で彼の腕にしがみついた。
 さっきまでの優しい彼はもうどこにもいなかった。
 熱い息が渚を欲しがり、柔らかい熱が、渚の中をかき回す。堪えきれずに漏れる声すら俺のものだと言わんばかりに暴れ回る。

「ん……! あ」
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