契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 漏れる声が、信じられないくらいに艶めいて、渚の耳を真っ赤に染める。恥ずかしくてたまらないのに、どうしても止められない。巧みな彼の攻撃に、渚はただ翻弄され続けた。

「渚」

 荒い息が耳に囁く。

「今すぐに、俺のものになってくれ」

「あ、……んっ!」

 答える前に、また唇が塞がれる。
 イエスしか許さないといでもいうような、荒々しい口づけに、頭の中が和臣の色に塗りつぶされてゆく。
 渚だって、もう一秒も待てなかった。絡め合う熱が、漏れる吐息が、スーツを握る指先が、彼をほしいと叫んでいる。
 今すぐに彼のものにしてほしい。
 目を閉じてただ彼にしがみつけば、それが合図になったようだ。

「寝室へ行くぞ」

 囁かれると同時に抱き上げられて、渚は彼の首にしがみつく。
 ガチャリと開いた未知の世界へと続く扉。
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