契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 それを思い出して、渚の胸が温かいものでいっぱいになる。愛しい人の本当の妻になれた。ようやくそれを実感して。
 和臣が身体を起こしてベッドに座る渚を抱きしめる。そして窓の外の街並みを眺めながら、少し悔しそうな声を出した。

「本当は、もっとちゃんと伝えようと思っていたんだけど。……渚に」

「……和臣さん?」

「俺の気持ちだよ。渚の問題が落ち着いたら、期間限定の結婚なんてバカなことは終わらせて、本当の妻になってほしいってちゃんと言うつもりだったんだ。……それなのに、あの記者め」

 そう言って和臣は心底忌々しそうに、舌打ちをする。
 渚は「あ!」と声をあげた。

「週刊誌‼︎ ……いいんですか? あんなこと言ったりして……」

 でもそこまで言いかけて、そういえばと思い口を閉じた。そういえば和臣は記者に対して言ったことは本当だとかなんとか言っていたんだった。
 あれはいったいどういうことだろう。
 昨夜、ここで気持ちを確かめ合った後、ふたりはそのままこの部屋で眠りについた。
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