契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「渚がやけに信頼してる音川さんも、結婚はしないと宣言しているだけで、女性との付き合いはわりと頻繁にあるんだ。他の弁護士だって……本当に見合い相手が俺でよかったよ」

「そんなことは、わかっています! でも私が相手だったら大丈夫でしょうっていう話で……」

「ほら」

 和臣の言葉とともに渚の景色が反転する。
 ベッドに優しく押し倒されて、渚は目をパチクリとさせた。

「渚がそんなんだから、俺は少しも君から目が離せない」

 見下ろして、和臣は渚にとってはどこか釈然としない言葉を口にする。
 その瞳にさっきまではなかった不穏なにかが浮かんでいる。

「そんな……んっ!」

 頭に浮かんだ渚の反論は、熱いキスに遮られた。そしてすぐに頭の中に溶けて跡形もなく消えてしまう。
 まだ少し慣れない触れ合いに、渚は身体をしならせた。
 昨日までは知らなかったこのとろけるような口づけに、渚の脳はいとも簡単に溶かされて、なにもわからなくなってゆく。
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