契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣の大きな手がパジャマの上を這い回り、渚に甘い刺激を送り始めた。

「和臣さん、あ、ダ、ダメ……」

 渚は漏れそうになる吐息を噛み殺しながら身をよじり、精一杯の言葉を口にする。
 だが和臣は、明るい朝にまったく似つかわしくないこの触れ合いを止めるつもりはないようだ。
 くっくっと笑って渚の耳に囁いた。

「まぁいいよ、渚はそのままで。どうせ俺はもう一生君から目を離せそうにない。ずっと見ててやるからな」

「和臣さん……なに言って、あ……ダ、ダメ……」

 渚はもはやそれ以上、なにも口にすることができなくなってゆく。
 和臣が真っ赤になった渚の耳に、甘く身勝手な言葉を囁いた。

「ほらもう諦めて。渚にそんなつもりはなかったとしても、俺を夢中にさせた責任は取らないと。君はもう一生、俺の腕の中だ」

 知らなかった。
 愛する人に愛される、そんな単純なことがこんなにも幸せだなんて。
 夢と目標さえあればそれでいいなんて思ってた頃が嘘のようだ。
 これからは、彼の愛に彩られたこの世界で生きて行けるのだと思うと、どこまでも強くなれる気がした。

「愛してるよ、渚」

 大好きな人の愛おしい言葉を胸に、渚はゆっくりと目を閉じて、その腕に身を委ねた。

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