契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚は千秋の隣の席の義兄に助けを求めるが、彼は苦笑するだけだった。

「この記者さんいい人よ。"瀬名和臣弁護士を一瞬にして陥落した新妻はモデルといっても通用する美女だった"って書いてくれてるわ。なにかお礼をしなくちゃ」

「もーお姉ちゃんったら……」

 あくまでもマイペースな千秋に渚は呆れはてて席に座る。
 祐介が向かいの席の和臣をからかった。

「週刊誌なんかの挑発に乗っちゃったんだ」

 テーブルの真ん中の席で、龍太郎が日本酒を手に眉を寄せる。

「まだまだ修行が足らんな」

 和臣が、微妙な表情で咳払いをした。

「……すみません」

 年の瀬、大晦日の夜である。
 この日、父が住む渚の実家に、姉夫婦と渚、和臣が集まった。そして本当の家族として、皆で鍋を囲んでいる。
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